動物保険制度の歴史/どうぶつ健保ならアニコム
保険制度設立ヒストリー(2)

動物保険制度の歴史/どうぶつ健保ならアニコム


1.制度設計の出発点
実際の事業化に際しては、まず、これまでの失敗事例を徹底的に検討することから行われています。また、現存事業者の運営状況の分析も事業化の大きな指針となっています。特に、動物保険制度においては、そのニーズがとても高いため、通常、一定以上の広告宣伝経費を負担できる能力があれば、瞬間的には加入者を獲得することが可能となっていますが、次年度以降も当該保険制度を継続されるケースがとても低く、せっかく動物保険制度にご加入されながら、その内容に不満を感じられ、それ以降継続されないケースが散見されていることが判明しました。
これまでの動物保険制度の内容に対するこれらの不満足を分析いたしますと、次の3つに集約されます。
 
疾病カバー範囲
これまでの動物保険制度では、皮膚病、外耳炎、膿瘍、耳血腫といった罹患確率が高いものが対象外であったため、実際の給付金支払時にもめるなど、不満足の原因となっていました。
 
支払事由カバー範囲
通常、保険制度においては、通院・入院・手術に分別して給付金を支払うことが多くなっていますが、この支払事由を、人間の保険同様に入院・手術に重点を置いたものが多くありました。動物医療においては、通院治療のウェイトが極めて高いにも関わらず、通院が支払対象外であったり、5日以上の通院でなければ対象とならなかったりしていたため不満足を生んでいました。
 
給付金制度手続き
通常の保険制度においては、自動車保険や火災保険を見てもそうなのですが、給付を受けるためには加入者自身が、事故を立証し、給付額を請求するための書類を準備し、保険会社に送ることが必要です。当然動物保険においても、これまでの加入者自身が請求手続きを行うパターンで運営されてきましたが、飼い主様の真のニーズと異なっていたと考えられています。つまり、飼い主様が口にする動物保険があればとの動物保険とは、自動車保険や火災保険のようなものではなく、ヒトの健康保険のようなものであり、保険証を病院に持って行けばそれで、保険診療を受けることが出来、自分自身では何もしなくても良い、飼い主様にとってとても都合が良いものを想定していたということです。このギャップが不満足を生んでいました。
 
新たな動物保険制度を事業化するためには、少なくとも、これらの不満足要因をクリアする必要があります。つまり、保障範囲を広げフルカバー化し、ヒトの健康保険のタイプに近づけるということです。

2.保険制度化の可能性
まず、第一の命題である「保障範囲を広げる」点をクリアするためには、実際の支払確率を実務的に許されるレベルまで精緻に読み込むことが必要となります。このため、実際のカルテから、疾病発生状況および医療費の付加状況の分析を行うことと致しました。
例えば、各病院の売上の状況を見ます。月ごとにブレがありますが、このブレは狂犬病・混合ワクチン・フィラリア予防によるもので純治療においては、緩やかな季節性を持っていることが確認できます。これらの状況を病院ごとにどれほど異なるかを検出することにより、純治療のマクロでの状況を確認することが出来ます。

次に、この純治療の部分を、犬−年齢別などにブレークダウンすることにより、疾病・傷病の発生確率を検証していきます。結論的には、疾病・傷病発生の状況は確率的に読み込めるものであり、保険制度を施行するに馴染むものであることが分かりました。

犬の年齢別疾病発生率の推移
しかし、問題は、これらの疾病・傷病に対する治療費のブレの大きさについての議論です。保険制度全般を見渡した場合、料金が自由でないのは、ヒトの健康保険分野のみであり、自動車保険にしても、火災保険にしても、その料金体系は自由であり、拘束されていないことからもお分かりになるとおり、料金体系は自由であること自体は、保険制度の実現性に対し影響を与えません。また、同様の手術であっても、使用される麻酔、針、縫合糸・・・使用機材、投入されるスタッフ数・・・すべてが異なるわけで、料金を均一にすること自体に無理があるため、料金が病院ごとに異なっているのが現状です。ここでの議論の対象となるのは、そのばらつきの大きさについてです。すなわち、通常多くの業態で、一つのサービスカテゴリーに対して料金の分布をプロットすると、正規分布を描きます。保険料の原価計算は簡単にご説明すると、事故確立×料金の平均値となるため、この平均値の信頼性の評価が重要となります。
 
動物医療においても、初診料など比較が容易な項目については、尖度の高い正規分布を呈しており、平均値に対する信頼評価は高くなりますが、時間外診療費などお客様にとって比較が困難な項目については、その他の業態同様、尖度の低い正規分布となり、平均値の信頼性評価は低くなっています。
最終的な病院ごとの料金のばらつきについては、簡単にご説明申し上げると、料金集約の進んだ自動車業界に比しては、ばらつきが大きいが、住宅業界等と比した場合にはそのばらつきが小さいと判断しており、結論的には、保険制度が運営可能な業態であると判断いたしました。

初診料と深夜・悪天候時の時間外診療

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