動物保険制度の歴史/どうぶつ健保ならアニコム
保険制度設立ヒストリー(3)

動物保険制度の歴史/どうぶつ健保ならアニコム


3.制度設計
フルカバーにすることは、掛け金に制限がなければ、たやすいことです。しかし、現実にはそのようなことはありません。どのようなものであっても「値ごろ感」と言うものがあるため、動物保険制度に対する飼い主様の値ごろ感調査を行いました。
その結果は、犬や猫を室内外で飼われている方の層からは、「月々500円の保険料でも高い」と言う答えであり、室内飼いをされている方の層からは「良い保険制度であれば月々2000円でも3000円でも構わない」というもので、私どもは後者の方の層を対象に、掛け金の設定を月々2000円前後といたしました。
これにより、現在の保障内容である「すべての疾病とケガに対する治療費の50%を保障する」が生まれました。

4.保障内容
お支払対象
ここで、保障内容についてご説明申し上げます。
すべての疾病・ケガを保障対象としたのは上述のとおりですが、残念ながら対象外とさせていただいた項目がございます。これは「狂犬病について」です。この理由は、狂犬病は法律で予防接種が義務付けられており、予防手法が確立した分野であるとの認識から、狂犬病を保障対象とすることは「脱法行為を行っている人に対して保障を提供すること」となり、これを避けるためです。また、混合ワクチン・フィラリア予防薬によって予防が確立している疾病については、予防を行っていることをお支払条件としています。これは、予防を行わない場合も支払対象とした場合、予防措置を講ずることなく、罹患してから保険で治療すればよいとの状況を誘発するおそれがあったためです。ワクチンを接種された場合であっても、抗体価が高まるかどうか確率的な問題であるため、予防措置を講じたにも関わらず当該疾病に罹患した場合については、まさに保険事故であると考えられるため、そのような場合はお支払対象とするとしたものです。
 
次に、お支払限度ですが、治療費の50%をお支払するとした大原則に加えて、入・通院1日あたりのお支払限度を別枠で設けています。つまり、1日の入・通院に対して、アニコムからお支払する額が1万円までと言うことです。この1万円は医療費に50%を乗じた後の額であるため、医療費としては1日につき2万円までが保障の対象と言うこととなります。また、手術については、アニコムからお支払する額が10万円であり、医療費としては20万円までが保障対象となります。手術は、入院もしくは通院とセットなるため、実際的には入院5日とセットになったとすると、15万円までがアニコムからお支払する限度額となります。また、入・通院の支払限度日数が1年間それぞれ20日、手術については年間2回までと定められています。

この他のアニコムの特徴として、次の4つの特徴を挙げています。
【1】

1日の通院からお支払すると言うものがあります。これは、これまでの保険制度においては、通院を対象外としていたものが多かったため、強調いたしました。

【2】 アニコムの制度は、対応病院制度が柱となっていますが、転勤をされた場合など、 近くに対応病院がないと全く使えない制度であると、飼い主様の満足度がとても低下するため、対応病院以外であっても、飼い主様自身が給付金請求手続きをとる場合については、全国の病院でご利用いただける制度としています。

【3】 これまでの保険制度において、ガンお見舞金などが設定されているものがあります が、この支払意味が手切れ金的なものであり、そのことで飼い主様の満足度を低下させていました。そこで、アニコムでは心疾患でエナカルドを処方されつづける状況になっても、掛け金をお支払いただける限り、給付金をお支払する方式といたしました。

【4】 どうぶつも、人間と同様に、恒常的に病院にかかる層と全然かからない層に分化されますので、全然通院・入院されない層については、健康返戻金制度を設け、掛け捨てでは無いようにいたしました。
 
お支払い例
以前のパンフレットでは、お支払例として、外耳炎・皮膚病等といったものを例示しておりましたが、支払額が低額に過ぎたため、顧客募集効率がとても低いものとなっていました。そのため、現在のバージョンでは、比較的高額な支払例を掲載することと致しました。従って、この料金体系をアニコムが推奨しているわけではありません。
 
掛け金体系
掛け金体系は、まず、動物の品種によって掛け金の高低を分類しています。これは、実際のカルテをもとに分析を行ったところ、犬については、犬種による医療費の高低の有意差が検証できたため、分類を行っています。しかし、猫・鳥・ウサギについては、標本数の関係等もあり、完全な検証は現段階では行いきることが出来ませんでした。本来であれば、検証が出来ていない以上、無理に細分化することなく、料率算定をすべきでありますが、犬だけを品種別分類しその他動物を一本化料率で提示するのではなく、敢えて分類することと致しました。
この分類については、実は、飼い主様の満足度向上以外に今後の制度運営にあたって、大きな意味合いがあります。これは、現在の掛け金体系にアニコムは自信を持っていますが、残念ながら、この掛け金体系を割り出した統計が日本に動物保険制度が根付いていなかった時の、医療サイドと飼い主様サイドの行動を基にしたものであるため、実際には必ず修正が必要であり、この修正バッファーのために存在すると言うことです。動物保険制度の普及により、各主体の行動は変化します。例えば、医療サイドにおいて、これまで診断を行うに際し血液検査のみ行っていたところを、より確実を期するためにレントゲン検査を行うなどです。また、飼い主様サイドにおいても、保険制度は病院に行きやすい仕組みとなっていることから、利用頻度が高まるなどです。このようにして、新たに保険制度が出来た場合、成立からしばらくの期間は掛け金をアジャストしていきます。
具体的には、掛け金そのものを変更することにおいては、飼い主の信頼感の問題もあり、金額そのものを修正することはなるべく避けるべきことであることから、修正をする際には、柴犬をAからBに変更するなどするということとなります。
動物品種によって掛け金クラスを決定した後は、地域別の掛け金表に当てはめ、最終的な基本掛け金を判別することとなります。地域別に分類している理由は上記の理由に加えて、動物病院ごとの料金格差を反映する必要があったためです。理論的には、日本のすべての病院の料金体系を調べ、高額な順から設定していく必要がありますが、現実的ではないため県別と致しました。ロジックは、個別病院の料金設定は通常、近隣の病院の料金に影響を受けながら行われており、その拡大解釈において県別の分類と致しました。当初の分類は、アニコムにご協力いただいた病院の診療料金体系および、県別の物価水準等をもとに行われています。
このような分類は1年に1度見直していくことで、アジャストしていきます。
割増引きについては、去勢/避妊手術が施されている場合には5%引き、多頭加入される場合には5〜7%引きとしています。また、アニコムでは慢性疾患についてもお支払対象としているため、基本掛け金のテーブルだけでは収支を保全することが出来ません。このため、支払が多いペットに対しては掛け金が割増に、少ないペットに対しては割引となるとように設計されています。具体的な割増引きテーブルはパンフレット裏面の健康割増引き制度をご参照いただくこととなりますが、この仕組みを簡単にご説明すると、通常、ほとんど病気やケガをしないペットが偶然に交通事故に遭い、医療費支払がかさんだ場合であっても、このようなケースにおいては、掛け金の変動を少なくしており、逆に、毎年慢性疾患等で支払が行われている場合には、掛け金の割増率が高くなるようになっています。もちろん、支払がなければ割引となります。ここまでで、健康保険制度の部分のご説明は終了です。
 
特約
健康保障共済制度においては、病気とケガに対する医療費を保障対象としているため、経常的に必要となる予防費については保障対象となっておりません。これは、共済制度が偶発的な経費を平準化するものであることから、やむを得ないことであり、これまでアニコムにおいても、予防費は動物と暮らすために必要不可欠な費用であり、自動車であれば車検と同じと言えるものであることから、自動車保険で車検費用が対象とならないことと同様、予防費を保険制度で賄うことは出来ない旨、説明を行って参りましたが、飼い主様のニーズの強大さから対策の必要性を認識し「予防プラス特約」の創設に至りました。
内容的には、率の良い積み立て貯金と考えていただければ結構です。月払いであれば、390円で5000円の予防チケットが発行されるようなもので、320円の利息が付くことと同じ効果を出しています(年払いであれば、710円の利息)。制度運営者側としての共済制度との整合性については、注釈で記載したとおり、予防を行うことにより、そもそもの健康保障共済制度でお支払する確率が低下するため、予防を促進する立場から本特約を創設したとの整合性の補完を行っています。
「賠償プラス特約」については、他人の身体や財物(動物も含まれます)に迷惑を掛けた際の損害賠償を保障する内容となっています。
 
加入方法
犬猫で5歳11ヶ月までの場合、自己申告でのご加入可能と致しました。制度発足当初は健康診断の受診を義務付けておりましたが、飼い主様のお手間が増えることから、基準を緩和しました(このことによる大きな事故率の変化はありませんでした)。また、より高齢の場合、犬猫で8歳11ヶ月までの場合は、獣医師による身体検査を加入審査とすることといたしました(この部分も当初は血液検査を含むものでしたが先の理由より緩和いたしました)。
個体確認については、マイクロチップが装着されている場合については、そのナンバー、装着されていない場合については、DNA鑑定を行うための毛根を申込書上のシール部に貼り付けていただくこととなります。
飼い主様サイドにおいて、申込書上段の飼い主様情報、中段の動物情報、下段の掛け金引落しための金融機関口座の登録を行った上で、動物の写真を1枚添えて、同封の返信用封筒でアニコムまで郵送すると、毎月15日までに到着したものについて翌月1日から保障開始の証券が飼い主様に郵送されることとなります(掛け金の引き落としは保障開始月の27日となります)。加入審査の審査料は対応病院で審査を受けられた場合は無料、対応病院以外では、実費がかかります。

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